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ico-report01アジアに伝わる伝説 ~星に込めた願い~

今日、私たちの生活はとても忙しい。毎日、仕事や家事、勉強、時間などに追われ一息つく間もなく一日、一日を過ごしている。夜が明ければ朝になりそしてまた夜が訪れる。太陽が沈めば暗くなり、空に輝く月や星が姿を現す。そんな当たり前のことすら、忘れてしまいそうになるぐらい街中は明るく、ネオンの光に満ちている。空を見上げたのはいつぶりだろうと、しばし立ち止まってみる。昼はまばゆい光を放ち大地を照らす太陽の温かさに替わり、静かな夜に満ち欠けを繰り返す月のなんとも神秘的な姿、巡り巡る星々の美しい光が地球上にあるすべてを照らしている。宇宙とは、天体とは、一体何ものなのだろうかそんな好奇心や疑問が世界中の民族で神話や伝説を生むことになったのだ。アジア諸地域でもさまざまな物語が生まれ伝えられている。そんな神話や伝説から伝統的な文化や生活を読み解いてみたい。
 
 天体モチーフにした逸話といえばギリシャ神話が有名であるが古代のアジアでも人類にとって最も身近で絶対的な存在だった月と太陽をはじめとする物語が数多く作られたと言われている。日本、中国、韓国、この三か国だけを見ても実に多彩であるのだ。例えば、誰でも一度はきいたことがあるであろう七夕の伝説も国によって少しずつ異なるし、時期や風習も違っていて面白い。日本では織姫と彦星が天の川で年に一度だけ会える日とし、もし雨が降ると星が隠れてしまい二人は会えないと考えられているが、韓国では七夕の日に雨が降ると「二人が再会を喜んで流した涙」と考えられておりその翌日に雨が降ったなら今度は「別れを惜しむ涙」と解釈されていると言う。また中国でも二人を会わせるために「七夕」の夜にカササギが二人の為に羽を連ねて橋を作ると言ったような素敵な伝説が残っている。
三か国でそれぞれ行われる「七夕」というひとつの行事においても相違点はあるが、共通して、自然や作物などへの感謝の意が込められていて古代から幸せを願う切なる思いを馳せている。他にも、その地域で起こった災害や不幸を忘れないように語り継ぐことを星に託して生まれた物語も多い。そしてその土地、地域に合わせた「祭り」を作り出し自然を称え、楽しみながら災いを祓い、文化を育んできたのだ。
 
 慌ただしく過ぎてゆく毎日に生き、近代科学や文明は着実に進歩していく世界に住む私たちだが、一歩足を止め、太陽が照らす朝日の眩しさや夜空に輝く星々の瞬きが今日も変わらず美しいと感じられたとき、どこにいても見上げる空はひとつであり世界とのつながりや尊さ、宇宙の壮大さを知ることができるのではないだろうか。空から生まれたいくつもの伝説、神話を通して学ぶべき知恵や歴史はまだまだ無限だ。永続的で不偏な存在である天体、宇宙という観点から人と天との関わりあいとそれに基づく占星術や生活の風習を創造していった過程をみていくことも非常に興味深いものが見えて来るだろう。
 
 
参考文献
 海部宣男 監修 柹田紀子・川本光子 邦訳 「アジアの星物語」万葉舎
 
 
カルチャーリポーター:百衣 由佳